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ヤンデレ兵助(竹くく、モブ)

※兵助視点
※暗い・病みにつき注意





1日の授業が終わって、兵助はいつものように竹谷の部屋へ向かう。
クラスや委員会が違う竹谷とは昼間は会えない。
いつも特に時間を決めて待ち合わせしているわけではないが、なんとなく竹谷の部屋で授業後は一緒に過ごすのが日課となっていた。

竹谷の部屋に入ると布団がだらしなく敷かれたままだった。
そういえば今朝は二人して寝坊したなと兵助は思い返し、乱れた布団を畳んだ。
これから夕御飯を食べて、雷蔵や三郎達と少し今日のことを話したりして、風呂に入ったら、またすぐ寝ることになる。
兵助は布団を襖にはしまわず、部屋の片隅に寄せておくだけにした。



「はち遅いな…」

しばらく兵助は部屋でぼんやり座っていたが、ちっともやって来る気配がない。
恐らくは委員会でまた何か事態が起きたのだろう。

中庭へ行くとやはり予感は的中で、脱走したと思われる虫籠を持って泣き喚く下級生と、それを宥める竹谷がいた。
竹谷は身体を屈めて目線を下級生に合わせ、大きな手のひらで「大丈夫だ」と頭を撫でる。
心から飾りのない笑顔で、後輩を可愛がる竹谷。
誰にでも平等に優しい竹谷に、兵助は内心やきもきしていた。
雷蔵に以前兵助は嫉妬しないね、と言われたことがあったが、それは表に見せないだけで本心は醜く渦巻いている。
こんな気持ちになる自分が嫌で、兵助は足早にその場から去った。




「わりぃ、遅くなった」

しばらくして少し泥で汚れた竹谷が部屋に戻ってきた。
疲れたーと大きな息をついて竹谷が身体を畳に投げ出す。
兵助は手持無沙汰で何となくやっていた復習を閉じて竹谷に寄り添った。
ぽすと自分よりも厚い胸に兵助が頭を預けると、さきの後輩のように掌で包まれた。


「兵助どうした?」

同い年の同性なのに、広い胸に顔をうずめて撫でられたら安堵したなんて女々しい。
竹谷は自分が好きだとなかなか口で言えない分、全身全霊で好きと表現してくれる。
何の面白味のない自分のどこが良いのか分からない。竹谷ならきっと他にも合う相手はいくらでもいるだろう。
でも自分には竹谷じゃないと駄目だ。
はなさないで。ずっと傍にいて欲しい。竹谷が他の人を視界に入れているのだって本当は耐えられない。

こんな汚い感情を知りもしない竹谷が熱く見つめてくる。

「兵助…」

背面から筋肉質な腕がまわってきて、ぎゅっと抱きしめられる。
少し強めに抱き留められる感触が心地よくて、竹谷を見上げたら唇が降りてきた。

「ぁ…んっ…んんっ…」

竹谷は兵助の唇を軽く吸ったあと、舌をさし込んで小さな口内を侵していく。
暖かい竹谷の舌の感触をじっくり感じたくて兵助は目を閉じた。

「っん、…ふっ…んん…ッ」

唇は重ね合ったまま、竹谷は兵助を畳に押し倒す。
昨日も散々明け方まで身体を貪り合っていたのに、何度繋げても満ち足りることはなかった。
いくらでも身を重ねていたい。貪欲にお互いを求め合う。

「っ…はぁっ…ッあぁ…っ」

竹谷の手が兵助の滑らかな肌を撫でまわす。
時折爪でカリカリと突起を引っかかれて、兵助はじれったさに身体を捩った。
もぞもぞと動かした足に、竹谷の既に昂ぶっているものが触れる。
同じように感じてくれているのだと思うと嬉しくなった。

「兵助好きだ」
「はち…」

竹谷が兵助の装束を脱がせながら告げてくる。
こんなにも竹谷に愛されて幸せだった。
しかしその半面、この幸せがいつまで続くのかと不安が常に付きまとっていた。








ある時、兵助はい組の実習で忍務に出向いた。
久々の厳しい実習内容に、い組の生徒達は苦戦した。
兵助も何とか課題を達成することはできたが、無傷というわけにはいかなかった。
その帰り道、追手に掴まってしまう。

「なんだまだガキじゃねぇか」
「やだっ、ひッ…ああぁッ!!」

子供などいつでも殺せると思ったのだろう。
相手方の忍者達は、兵助を弄んでから切り捨てることにしたようだった。
兵助の艶悦な肢体へ飢えた男たちが群がる。

「っ…ガキのくせにこの身体たまんねぇな…ッ」
「諜報用に色仕込まれてんだろ」
「やあぁっ、あッ、ひぅっ…あっあッ…っ」

何度も身体を貫く熱い塊に兵助が意識を飛ばし、次目覚めたときは学園の保健室だった。






兵助が目を開けると、手を握ってくれているのは愛おしい人。
寝ていないのか、竹谷の目の下にはクマができていた。

「兵助ッ…気がついたっ…」
「…はち…」

傍にいてくれている竹谷に、兵助はほっと胸を撫で下ろした。



学園側は配慮してくれているのか、授業はしばらく出なくて良いと言われた。
伊作はせめて身体が癒えるまでと言っていたが、いつまでもに保健室にいるのも嫌で、兵助は部屋に戻った。

竹谷は毎日兵助の元を訪れた。
今までは兵助が竹谷のところへ行くばかりだったが、竹谷は授業が終わるとすぐに兵助のところへ向かった。
そのまま次の日の授業が始まるまで兵助と一緒に過ごす、その繰り返し。

「兵助、体調はどうだ?」
「大丈夫だよ。はちは心配性なんだから」
「……」

無理やり笑顔を作って、兵助が竹谷に笑いかける。
竹谷はそんな兵助を見るのが痛々しくて、見舞いに持ってきた果物をどさりと畳に落とすと、兵助を強く抱き締めた。

「兵助ッ、おれがずっと傍にいるから」
「うん…」

竹谷は本当に優しい。
そして汚い自分を知らない。



別に犯されたことは何とも思わない。
忍者として生きると決めてから、多少の心身的苦難は付き物だと割り切っている。
そればかりか、あの出来事があって以来、毎日竹谷は付きっきりでいてくれるようになった。むしろ感謝したいくらいの気持ちだ。

竹谷は委員会にもほとんど顔を出さなくなり、いま完全に竹谷を独り占めしている状態だった。
弱々しい素振りをすれば、竹谷はいっそう大切に扱ってくれる。
これは竹谷を自分だけのものにする、絶好の機会―。



兵助は作り笑顔をつくりながら、心のなかでほくそ笑んだ。い組が一週間の忍務に赴いた。
かなり難攻のようで、帰ってくる生徒たちは重傷を負ってくるものも多かった。
そんな中、兵助はなかなか戻ってこなかった。

タイムリミットの一週間を越え、教師陣が帰ってこない生徒達を探しに各地へ散る。
竹谷は自分も行くと再三教師に申し出たが、い組の二の舞になってしまうかもしれないと宥められた。
焦る気持ちを抑えきれずに、竹谷は学園の門の前で教師の帰りを待った。



数日後、見つかった兵助が秘密裏に保健室に運ばれたと聞き、竹谷は急いで保健室へ向かった。

「兵助は…ッ!?」
「無事だよ。ただ…」

伊作が言いづらそうに顔を反らす。

「何ですか!?まさか…瀕死とかじゃ…」
「いや、そうではないんだけど…」

運ばれてきたとき既に酷い状態で…、と伊作が口ごもる。
核心を言おうとしない伊作にじれったくなって、竹谷は医務室の扉を開けた。

「待って、竹谷まだ―…」
「兵助っ…―ッ!!」

扉を開けて竹谷は言葉につまった。
引き千切られた蒼紺の忍装束に、無数の擦り傷と殴られた痕。
血の気のひいた兵助は致命的な外傷はなかったが、ひと目で暴行を加えられたことは明らかだった。

「…へい…す…け…っ」

申し訳程度にかかっている袴を下ろすと、白い凝固した液体の痕跡に赤い血が混じっていた。
兵助を抱くときは壊れ物を扱うように大事にしてきたのに、亀裂するほど乱暴に嬲られたのだと知らされて、竹谷は蒼然とする。

「っ…誰が兵助をこんな目に…ッ」

血が出るのも気にせず、竹谷はギリッと唇を強く噛みしめて怒りに震える。
兵助が散々泣き叫んで自分に助けを求めていたかもしれないと思うと、悔やんでも悔やみきれない想いでいっぱいだった。



「伊作先輩…このこと知ってるのは…」
「僕と竹谷と、あと一部の先生方だけだよ」

もちろん久々知のためにも尾ひれつかないようにするから、と伊作が言う。
周りに知られていなくて竹谷は少しほっとした。
プライドが高い兵助は、例え仲の良い勘右衛門や雷蔵でも、凌辱された事実を知られれば余計に傷つくだろう。

「…兵助が目覚めるまで二人っきりにしてください」

自分がしてやれること。
安直ではあるが、ずっと傍にいてやることしか思いつかなかった。
兵助が一番辛いとき、傍にいてやれなかった自分の腑甲斐なさ、それを少しでも償いたい自分本位な想いかもしれない。
それでも兵助を、この先二度と離しはしないと、竹谷は固く心に誓った。






二日後、目覚めた兵助はひどく疲れた様子だった。
学園からしばらく療養を言い渡された兵助は、そんなに大したことじゃないのにと言っていたけれど、自分も休んだ方がいいと思った。


竹谷は毎日授業が終わるとすぐに、兵助の元へ駆けつけた。
やってきた竹谷に、布団の上で上体を起こして読書にふけっていた兵助が本を閉じる。

「兵助、体調はどうだ?」
「大丈夫だよ。はちは心配性なんだから」
「……」

兵助が心配させないようにと無理やり笑顔を作って、笑いかけてくる。
強がっている兵助を見るのは辛くて、竹谷は衝動的に兵助の細い身体を抱き締めた。
見舞いにと持ってきた果物がころころと転がる。

「兵助ッ、おれがずっと傍にいるから」
「うん…」

兵助がか細い腕で応えてきて、守るべき存在を竹谷は強く感じた。




「でそのとき三郎がさ~…んッ?!」
「三郎とか雷蔵の話聞きたくない」

部屋にこもっている兵助に、今日あった出来事を竹谷が話していると、唇でその先を塞がれる。
あからさまな嫉妬に、しょうがねえなと竹谷は照れ笑いをした。

「はち…」
「ん、兵助」
「…んっ…んぅっ…ん…ッ」

口を重ねながら、抱えた兵助の腰の細さに竹谷はびっくりする。
もともと兵助は華奢だったが、最近は食欲もあまりないようで、いっそう細さが進行していた。

「ッやばいな、兵助また痩せたか?あまり動くと壊れそうだな」
「い、いっ…はち、なら…っ、壊して…ッ」

その時はまだ安易に考えていたけれど。
本当に兵助は壊れてしまったようだ。
そう気づいたのは数日後のことだった。









いつも通り竹谷は兵助と一緒に寝ていたが、急に小尿をもよおして厠へ立った。
戻ってきたら、寝ていた筈の兵助が起きていて、細い身体を両手で抱き締めながら震えていた。

「兵助っ!?どうしたんだよ?!」
「はち…ッ、どこ…行ってた…の…?」
「厠だけど…」
「いな…く…なっちゃったのかと…思って…」
「兵助残していなくなるわけないだろ」
「はち…」

兵助に触れてやると、兵助は少し安心したようで昂ぶった動悸を落ち着かせる。
そのまま兵助は竹谷の腕の中で眠りについた。
その日はそれで終わったが、朝起きた兵助はとんでもないことを言い出した。

「はい」
「はいって…何だよこれ」
「今度からもよおしたらここにして」

兵助の手には風呂場にあった桶。
これで用を足せというのだろうか。
竹谷はとん拍子もないことを言い出した兵助を、兵助がジョークを言うのも珍しいなと笑った。

「はは兵助、冗談…」
「おれは本気だけど」
「……」
「はちは部屋から出ないで」
「…出るなって授業もあるし無理だろ」
「ずっと傍にいてくれるって言ったのに」
「それは…」
「竹谷がいてくれないと怖いよ。お願い一緒にいて」
「兵助…」




二十四時間、ほぼ二人きりの生活が続く。
授業は兵助が落ち着くまでの間だけということで、特別に休むことを許可してもらった。
食事は勘右衛門が運んできて、部屋の外に置いていく。
以前、部屋の中まで勘右衛門が入ってきたとき、兵助は急に発作を起こして怯えていた。
何も知らない勘右衛門はひどくショックを受けていた様子だった。

やることもない竹谷と兵助は、常に身体を交合わせる。

「やだよはちもっと抱いてよ」
「兵助…」

以前の淡泊だった兵助からは考えられない。
自分から強請ることなど一度もなかったのに、いまでは甘えた声で縋りついてくる。
竹谷は兵助の艶やかさにくらりとあてられながらも、欲望をぐっと堪え込んだ。

「駄目だ」
「っ…はちはおれのこと嫌いになったの?」
「違ぇよ。これ以上抱いたら兵助の身体の負担になるだろ」

寝たきりの兵助の体力が落ちてることは目に見えており、現に最中に何度も意識を飛ばすことがあった。
竹谷は兵助を宥めようと身体を引き剥がす。

「いいっ…身体なんてどうでもいいからッ、ずっとはち…感じてたい…っ」

取り乱して兵助がしがみついてくるとどうしようもなかった。
異様なまでの兵助の執着に、竹谷はこの先に不安を抱くようになった。


そして事件は起きた。






外部とシャットダウンしていた部屋の戸がトントンと鳴らされる。
竹谷は兵助をちらりと見て、機嫌が良いことを確認し、戸を開けた。
少し離れたところから雷蔵と三郎が顔を見せる。
部屋の中に竹谷以外の人を入れることを拒絶する兵助に、雷蔵や勘右衛門たちはこうして兵助や竹谷に会いに来ていた。

「兵助、具合どう?」
「…最近は調子いいよ」
「それは良かった。早くまた皆で遊んだりできるといいね」
「うん」
「そういえば、前に竹谷が拾ってきた猫が子供産んでたよ」
「まじで!?あいつも無事出産できたのかぁ~」
「ふふ、小さくて凄い可愛いよ。いま貰い手を皆で探してるとこ」
「無事見つかるといいけどなー」
「きっと見つかるよ。可愛いもん」
「……」
「…?兵す…」


キーン


「あれ、いまの音なに?」
「…雷蔵、気のせいじゃないのか」
「そうかな?でも確かに…」
「いいから雷蔵行くぞ」
「え?ちょっと待ってよ三郎!まだ全然話してないのに」
「兵助疲れてるみたいだから、また出直して来ような」

残ろうとする雷蔵を、三郎が半ば強引に連れていく。
雷蔵は訳も分からず、「また来るね!」と残して三郎に引っ張られていった。


「雷蔵達もう帰るんだ。忙しないね」
「……ああ」


残念そうに兵助が言う。
竹谷はその言葉にぞっとした。


見てしまった。




兵助が雷蔵に苦無を投げつけたところを。



雷蔵達がやってきたとき、竹谷は兵助と手を繋いでいた。
竹谷と雷蔵が歓談していると、兵助がぎゅっとその手に力を入れてくる。
兵助どうした、と竹谷が言おうとした矢先だった。
振り返らなければ気付くことはなかっただろう。
それほど俊敏な動きだった。

もう片方の手で懐から苦無を取り出した兵助は、雷蔵へ目がけて素早く苦無を放った。
それは的確に一点に向かって飛んでいく。
微かな殺気を察知した三郎が、間一髪のところでそれを防いだ。
隣りにいたのが兵助と同等の実力をもつ三郎でなければ、雷蔵の心臓に突き刺さっていたに違いない。

「はち、どうしたの?」
「いや……」
「変なはち」

くす、と兵助が笑う。こうして見ると、無垢な可愛い兵助なのに、行動は狂気じみていて竹谷は恐ろしくなった。
竹谷の心を読み取ったように、兵助は急に真顔になって竹谷に抱きつく。

「おれにははちだけでいい。他は何もいらない」
「…兵助」
「だからはちもおれだけ見て。はちが他のものを見るなんて許さない」


なにが兵助をこんなに変えてしまったのだろう。
気高く毅然としていた兵助はどこにもいなくなっていた。

それでもずっと傍にいると心に決めたのだ。
たとえ兵助がどうなろうとも、もう二度と離さないと。



「…分かった」

竹谷の言葉に、兵助が心底嬉しそうに微笑む。
どこかで鳥籠の閉まる音がした。



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