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片恋②

「あはは、竹谷それうける!!」
「だろ?そのときさ、」
「あ、兵助!」
「……」
「兵助当番遅かったね」
「うん、ちょっと手間どっちゃって」
「大丈夫冷えてない?少し顔赤いよ」
「勘ちゃん過保護すぎ。自分の健康管理くらいできるから大丈夫だって」
「そんなこと言っててこないだも兵助風邪ひいだじゃん」
「それは…」
「ほら、お風呂でも入りに行こ。あ、竹谷ごめん続きは明日聞かせて!じゃあね!」
「おう…」



大切なひとがいます。



act2.尾浜・不破






「兵助最近元気ないね」
「え…そう…かな?」
「何かあったの?」
「何もないよ」
「ほんと?」
「ないって。勘ちゃんいつも心配性なんだから」

一年の頃から変わらないね、と兵助が口を尖らす。

はぐらかされたけど、兵助が浮ついてるのは一目瞭然だった。
兵助のことならなんでも分かるんだよ。ずっと一番近くで見てきたから。
こういう兵助はきっと三郎絡みに違いない。

「兵助を悲しませるやつは許さない」
「え、勘ちゃん何か言った?」
「ううん。ちょっと用思い出したから出かけてくるね」
「こんな遅くに?」
「うん。兵助は先寝てて」



勘右衛門はろ組の長屋へ行くと、迷うことなく双忍で有名な二人の部屋を開けた。

「あ、勘ちゃん」
「ごめんね、夜遅くに」
「そう思ってんなら来んなよ」

雷蔵と二人きりの時間を邪魔されて、三郎が不機嫌さを全開にする。

「ごめんって言ってるじゃん。それより三郎、潮江先輩が呼んでたよ」
「はぁ?なんでまたこんな夜中に」
「知らないけど、また何かしたんじゃないの」
「やだ行きたくない」
「三郎ただでさえ目付けられてるんだから早く行った方がいいよ」
「やだ。行くなら雷蔵も一緒に来て」
「なんで僕まで巻き込むの」

いいから行ってきなよ、と雷蔵に強く言われて渋々と三郎が部屋を出ていく。
六年の長屋は離れているからしばらくは帰ってこれないだろう。
勘右衛門は思い通りの状況に心の中でほくそ笑んだ。

「う~ん今度は三郎何したんだろう」
「何もしてないよ」
「え?」
「呼び出されたっていうの嘘だから」
「え…なんで…」
「雷蔵と二人っきりで話がしたかったんだ」
「僕と?」

雷蔵が丸い目を大きくしながら不思議そうに首を傾げる。
雷蔵とは接点があまりないから、こうして二人だけで話すのも確かに珍しいかもしれない。

「雷蔵ってずるいよね」
「勘ちゃん?突然なに…」
「三郎が好きなこと気付いてるくせに知らないフリしてる」
「…僕は…」
「三郎と付き合おうが付き合うまいかどっちでも構わないけど、さっさと直談判してよ。三郎宙ぶらりんにさせといて誰が一番苦しむと思ってんの」
「……兵…助?」
「兵助が三郎好きなことも気づいてるんじゃない」
「……」
「なんで言わないの」
「…今の」
「今の関係崩したくないからとか良い子ぶらないでよね。いらいらする」
「……」






「やだッ、やめてよっ…ほどいて!!」

雷蔵は足を大きく開いて柱にくくりつけられていた。
必死で身体を捩る雷蔵の下で、勘右衛門が冷淡に下帯を解く。

「勘ちゃんッ、やめてっ、お願いだから…ッ!!」

きつく縛られた手首は痕が残りそうである。
雷蔵は肌が傷つくのも構わず、なんとか縄抜けしようと試みる。

「ひやぁあっ!!やだっ!!」

性器をぱくりと咥え込まれて、熱い口腔の感触に雷蔵はいやいやするように首を左右に振った。
根元から先端まで舌先で筋を刺激されて、ぞくりと快感が駆け巡る。

「やあっ、あぅッ、んっ、んん…ッ」

あまり快楽に慣れていない身体はすぐにほだされた。
勘右衛門は割れ目から滲み出た液を掬いあげて先端になすりつける。
びくびくと面白いほどに身体を震わせて反応を示す雷蔵に、勘右衛門は容赦なく追い立てていった。

「ああっ、はぁっ勘ちゃ…ッ…」

勘右衛門が顔を上げると、すっかりとろんとした雷蔵と目が合う。
快楽に身を寄せつつも、雷蔵はどこか切なそうな表情を浮かべていた。

「はぁっ、ぁっ…も…やめ…て…」
「さっさと三郎とケリつけるって約束する?」
「っ…しない…ッ」
「雷蔵強情すぎ」
「…ちゃんだって」
「え?」
「勘ちゃんだって竹谷のこと蔑ろにしてるじゃない…ッ!」

熱い吐息をつきながら、雷蔵が悔しそうに唇を噛み締める。

「なんで竹谷が出てくんだよ」
「いっつも兵助兵助って、勘ちゃんは兵助のことばかりだから気づいてないだろうけど、竹谷の気持ち考えたことある?!勘ちゃんにだけはとやかく言われたくない!」
「雷蔵…?言ってる意味がよく分からないよ。確かに竹谷とはよく絡むけど恋愛感情なんて全く含んでないし」
「…そう思ってるのは勘ちゃんだけだよ。竹谷は一年の時からずっと勘ちゃんが好きだったよ」

初めて知らされた友人の感情に勘右衛門は唖然とした。
でも確かに思い返せば、竹谷にそういう素振りは多々あった気がする。
自分は級友のことばかり追いかけていたから、そんなの深く気にしたことがなかった。

「僕はずっと竹谷が好きだった」
「雷蔵…」
「勘ちゃんだってはっきりしてよ!竹谷をきっぱりと振ってくれないと僕だって前に進めないよ!!」

普段温厚な雷蔵が声を荒げて喚き散らす。
勘右衛門は衝撃的な事実に返す言葉がなかった。

ただいえるのは盲目になりすぎていたということ。
周りの気持ちなんて汲み取ろうともせずに、一直線に目の前しか見えていなかった。

「…ごめん雷蔵。自分のことばっかりだった」

勘右衛門は顔を伏せて小さく謝ると、雷蔵を束縛していた縄を立ち切る。
そのまま逃げるようにして部屋を後にした。

「僕も…言わなきゃいけないって分かってるんだよ…」









「かーんーえーもーんー!!!お前嘘ついただろう!!!」

仕方なしに六年の長屋まで足を運んだ三郎だったが、当然用などない文次郎に「こんな夜中に来るとは何事だ!!」とこっぴどく怒られた。
同室の仙蔵にまでこってり絞られて、三郎の怒りは頂点に達していた。

「あれ?勘右衛門は?」
「…帰ったよ」

部屋の中には雷蔵一人しか居らず、当の本人の姿は見えない。
三郎は行きどころのない怒りで拳を震わせた。

「あいつ逃げやがったな!!ちょっとい組の長屋まで行って―」
「三郎」
「なに」
「…話が…あるんだ」




act2.了
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